『寝かせてたのは身体じゃない。欲望の方だった。』
「ねぇ、真澄さんって、男欲しいと思うことないんですか?」
年下男子の何気ないその一言に、笑って誤魔化した。
けど、笑ったまま――私は脚を組み直した。わざと、スカートが少しだけ上がる角度で。
あの夜のことは、きっかけにすぎなかった。
あれから私が“盛り”でもついたと?
いいえ、違う。むしろ逆。
私は、ようやく“自分を取り戻した”だけだった。
だってあの夜、彼の指が私の脚をなぞったとき――
私の中の何かが、濡れて待ってた。
ずっと、閉じていた場所。女の顔を脱ぎ捨てたようなふりをして、心のどこかで“もうこんなことは二度とない”と納得したふりをしていた。
でも、身体はちゃんと覚えてたの。
いやらしい音が部屋に響いても、私は声を押し殺したりしなかった。
むしろ、彼に聞かせてやろうと思った。
「これが、女の快感よ。若いだけのあんたじゃ、想像もできないだろうけど」って。
朝、シャワーを浴びながら、私は鏡の前で笑ったの。
「なに、これで終わり? もっとできたのに」って。
それからの私は変わった。
露骨にではない。でも、下着は黒に戻った。
香水も、夜だけは少し強めを選ぶようになった。
あの彼とは時々飲みに行くけど、もうそういうことはない。
彼は恋愛相談を持ちかけてくる。
「年上の人に惹かれてて…真澄さんみたいな」なんて、バカみたいなことを言うけど、私はうまく笑って、うなずいて、時々太ももを軽く叩いたりする。
そう、“相談に乗るふり”をして、私は彼を転がして遊んでる。
深入り? 本気?
一瞬、怖くなったよ。
自分の方が夢中になったらどうしよう、って。
でも、ちがった。
目を閉じれば思うの。
――彼じゃない男の顔。
――もっと無骨で、荒々しくて、私を抱き潰すような腕。
――逆に、年上の男に甘やかされながら、心も身体も蕩けさせられる夜。
私の中に、欲が芽を出した。
一人の男にハマるんじゃなくて、もっと試してみたい。
私の中に、まだどんな快感が眠っているのか。
誰の手が、それを起こせるのか。
性欲って、汚らしいものだと誰が決めた?
歳をとれば枯れるなんて、誰が決めた?
“欲しい”って言うことが、もう恥じゃない年齢になったのよ、私たちは。
この文章を読んで、ざわっとしたそこのあなた。
たぶん、もう火はついてる。
あとは、それを認めるかどうか――だけ。
ねえ。
あなたの“次の男”、もう決まってる?

